働く人のキャリアは財産であり、そのキャリア・アセット(資産)をいかに統合的に活用していくかについて議論するシンポジウム「キャリア・アセット・マネジメント キャリアはどう統合されるべきか」(政策創造研究科 雇用政策プログラム公開シンポジウム)を2010年1月9日(土)、市ヶ谷キャンパス田町校舎にて実施いたしました。
当日は GE グローバル・ラーニング クロトンビル・リーダーシップ・ジャパン マネージャーの田口 力氏を基調講演者・パネリスト、学習院大学経済学部教授の今野 浩一氏と東京都監査委員(元資生堂監査役)の金子 庸子氏をパネリストとしてお迎えし、本研究科教授の諏訪康雄氏との対談形式で進めていきました。
田口氏の基調講演ではご自身の、日本の人材開発に尽力されてきたキャリアと、GEのコーポレートユニバーシティであるクロトンビルでグローバル人材開発を担当されている現在のキャリアをいかに統合してきたかという点と、GEのキャリアの考え方をご紹介いただきました。GEでは社員全員がリーダーであることを求められ、リーダーシップ開発とキャリア開発を車輪の両軸として自己の成長を図っていくこと、キャリアを決めるのは上司ではなく自己の成長は自分自身が責任を持つこと、そのためには自身のキャリアを適切に棚卸し外部環境が自己に何を求めているかを把握したうえで、「パーソナルブランド」を確立すること、などを田口氏は強調されました。
討論の冒頭では、諏訪氏からキャリア統合を進めていくことの重要性が提起されました。これを受け、今野氏は労働市場においては、無制限に労働を供給できる単一的な中核労働者だけが存在していた状況が、多様な労働者が存在する状況に変化したことを踏まえ、共通的な人事管理の仕組みとして仕事という概念が労働契約の中心となることを指摘されました。
金子氏は、単一的な中核労働者だけが存在し、女性のロールモデルが存在しなかった状況の中で、いかにご自身のキャリアを切り開かれてきたか、また後輩となる人々にいかに影響をあたえてきたかを、具体例でわかりやすくご説明されました。これを踏まえ、会場の参加者との活発な質疑応答が行われました。
討論の後半では諏訪氏から、美術館が膨大な収蔵品の中からテーマに沿った収蔵品のみを選択して展示している例に喩え、人生の折り返し点以降のキャリアにおけるキャリア資産の意味づけ、相互の関連づけの意義が提起されました。これを受け、今野氏は、パーソナルブランドとしての自身の専門領域が外部に明確に知られていると、新たなキャリアが飛躍的に発展する可能性が高くなることを指摘されました。金子氏は自身のキャリアとして、社外や地域のネットワークを持っていたことの有用性を強調し、折り返し点は意識せずにますますキャリアを輝かせることに注力してきたと発言されました。田口氏は収蔵品の見せ方というストックだけではなく、折り返し点以降でも新たな能力開発を続けるフローの重要性を指摘されました。
シンポジウムでは、多くの方々の積極的な参加をいただき、盛会に終えることが出来ました。会場に足をお運び頂いた皆様方に、心より御礼申し上げます。