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当研究科 橋本正洋 教授が分担執筆した公益財団法人静岡県文化財団企画

『うつりゆく駿河湾(しずおかの文化4)人と自然の関わりから見た過去、

現在、そして未来』

(㈱ことのは社)が2022年7月31日に発刊されました。

(橋本分担)第三章 海洋生物資源と駿河湾

(前書きより)
本書は三部構成となっている。書きぶりは著者それぞれに個性的ながら、「人と自然の関わり」という

軸のもと、駿河湾という海域の歴史や課題、取り組み等が語られている。「駿河湾の形成と歴史」と題

する第一部では、駿河湾の地形・地質や形成史を概説し、周辺で暮らす人々の生活や文化の変遷を、環

境考古学的視点でたどっていく。駿河湾のあらましと歴史を振り返る、本書のベースをなすパートだ。

 第二部「駿河湾の現状と直面する課題」では、生物多様性や環境問題(海洋プラスチック汚染)、自然

に焦点を当てる。今を見つめ、これからの向き合い方を考えていく、ミュージアム的視点の王道を

容となった。なかでも環境問題と自然災害の稿は示唆に富み、必読だろう。

 第三部のテーマは「活用」だ。自然の恵みに生かされる私たちだが、利用可能な資源は無尽蔵では

い。ここでは、駿河湾の恵みでもとくに「文化的資源」「海洋生物資源」について、その特性や豊

さ、持続可能な活用に向けた取り組みなどを紹介していく。第二部から第三部にかけて散りばめら

たコラムもまた、駿河湾の「人と自然の関わり」を考える上で興味深い話題を提供してくれる。

世に永久不変なものはなく、自然環境もまた然り。しかしその変移は、人間活動の肥大化により明

かに加速している。駿河湾の自然環境、そしてその周辺に暮らす人々の営みは、この先どのように

りゆくのか。百年後も「豊か」と誇ることができるだろうか。他人まかせでなく、私たち一人ひと

の想像力と行動が問われる時代となった。べては「気づき」から始まる。本書が、お手に取られ

方の駿河湾へのさらなる関心を喚起させ、郷土の自然や文化のこれからを想うきっかけをもたらし

くれるとを、切に願う。